エセルとミズらん出会いの話
「ミズらんっ」
エセルは相棒のラグラージに声をかけた。
「どうしたんだ? ヤケに上機嫌だなー」
「あのね、荷物を整理してたら、こんなのが出てきたー」
エセルはミズらんに写真を見せる。
「おっ、ミシロタウンで撮った写真か。懐かしいな」
「うんっ!」
「今でこそ心を開く気があるポケモンみんなの言葉がわかるけど、エセル、あの頃は俺としか話せなかったんだよな」
「そうなんだよね」
その日、エセルは父に連れられて、キナギタウンからミシロタウンのオダマキ研究所に降り立った。
ポケモントレーナーですら収入が安定しないこの時世に、ポケモン雑技団の団長というニッチな生き方を目指す少女。
――まだ世界を揺るがす大事件に関わったり、特殊な前世の存在が明らかになったりする前のエセルの肩書きはそんなものだった。
「オダマキ博士。よろしくお願いします」
「やあ、カリブ、久しぶり。ええと、彼女がエセルちゃん?」
そんな世間話を聞きながら、エセルは床のタイルを眺めていた。
「あはは、少し幼く見えますかね。一応お宅の息子さんのユウキ君と同い年なんですが――エセル。もしかして緊張してるのか?」
初対面の相手、それも博士相手に緊張しないほうが無理だ。そう目で訴えかけるエセルに、オダマキ博士は言った。
「エセルちゃん……ポケモンは好きかな?」
エセルの白い頬がぱっと赤らむ。
「うん!」
「そうか。それなら大丈夫だ。ついて来なさい」
オダマキ博士は手招きした。奥の机の上に、三匹のポケモンが座っている。
「この研究所で初心者トレーナーに提供しているポケモン、キモリ・アチャモ・ミズゴロウの三匹だ。好きな子を選ぶといいよ」
「えっと……」
「なんだ。また初心者トレーナーかよ」
突然の声に、エセルが振り向くと。
そこには青いポケモン、ミズゴロウが座っていた。
「えっ、今、君、しゃべった?」
「は? 俺が人間の言葉なんかわかるわけ……って、……わかってるし」
「ええええっ!」
「――今思えば、ポケモンを造った勇者同士の来世での出会いがソレって、何だかな」
「……うん」
その時のことを思い出して、エセルとミズらんはなんとなく気まずくなる。
「――でも、出会いはどうあれ、会えてよかったよね!」
「――おうよ!」
いや、本当にここまで設定の規模が大きくなるとは思ってませんでした。
私の脳内設定もですが、ポケモン本家もアルセウスとか出てくるし。
とはいえ、脳内設定云々は公開小説第一段のコレでごちゃごちゃ言ってもしょうがないので、
今後の更新で明かしていきたいと思っています。消化不良ですみません。
戻る